渡米生活。(日記)

渡米生活。本家から切り離しました。あまり渡米生活に関係のないプログラムネタや音楽ネタなど。

レンタル楽譜の契約で知っておくべきこと

レンタル楽譜の契約、といっても、借りる人のことではありません。
作曲家が、音楽出版社と契約を結び、レンタル楽譜用に楽曲を提供する場合の話です。
もっといえば、作曲家、音楽出版社とも、JASRACの会員であることを仮定しています。
ちなみに、以下の話は2013年8月現在の話です。

この場合、契約によって、次のような事態が起こり得ます。

  1. この契約により、当該楽曲(レンタル楽譜になる楽曲)は、音楽出版社も共同権利者になります。具体的には、著作権使用料(この楽曲の演奏による演奏使用料、録音使用料など)の分配の際には、音楽出版社と折半になります。(音楽出版社との契約内容によるかも知れません)
  1. JASRACでは、同じ楽曲の異なる編成(たとえばピアノ版と吹奏楽編曲版など)を異なったレコードとはみなしません。また、改訂版か否かの差もありません。申請のタイミングで別IDが振られる事はありますが、基本的に同一の曲として扱われますので、そのうちのどれかの共同権利者リストが変更になった場合には、変更は全ての関連レコードに及びます。
  1. 従って、例えば、とある音楽出版社吹奏楽版のレンタル楽譜契約を結んだのだとしても、他編成の演奏やCD録音から来る使用料も、全てその音楽出版社と折半になります。

どういうことか、実際に例を上げてみると……

たとえば、吹奏楽版はレンタル楽譜でA音楽出版社に取り扱ってもらい、ピアノ版はB音楽出版社に出版してもらった、とかいうような場合。
まず、B音楽出版社JASRACに収めた楽譜出版時の著作権使用料が、半分はA音楽出版社に分配されます。
また、ピアノ版が演奏された場合の演奏使用料も、半分がA音楽出版社に分配されます。
A音楽出版社が、まったくピアノ版のプロモーションに関わっていなくとも、です。
共同権利者というのは、文字通り、著作者の全ての権利を折半する相手なわけです。

JASRACが別編曲を別レコード扱いにしてくれれば話は簡単なので、是非そうしてくれと交渉してみたのですが、逆にそうすることによって分配漏れの恐れがある、という理由で却下されました。
もっといえば、JASRACは「著作権管理団体」であって、編曲についてはどちらかといえば「原曲作曲者と相談の上そちらで決めて下さい」といった感じですので、そもそも編曲を単一レコード扱いする仕組みになっていないのかもしれません。
(既に原曲作曲者の権利が消滅した楽曲の編曲については、年4回行われるJASRAC規定の審査に通ったものだけが採用されます。この場合のレコードの取扱は、一般の作曲した楽曲と同じです)

楽譜出版の場合は、むしろ音楽出版社が作曲者に著作権使用料を払って楽譜を印刷し、共同権利者にもならない、というケースが多いので、このような問題は起こりにくいのですが、レンタル楽譜の場合は注意が必要です。

1曲につき、編成はいつも一通りしかない、という方は特に問題にならないと思いますが、同じ曲で編成違いの編曲が多くある方は、レンタル楽譜の場合、こういった事態もあり得ると念頭に置いて契約された方がよろしいかと思います。