渡米生活。(日記)

渡米生活。本家から切り離しました。あまり渡米生活に関係のないプログラムネタや音楽ネタなど。

音楽ストリーミングでアーティストに払われる金額について

最近、クラシック音楽の(無料)試聴についてエントリでストリーミングについても書いたので、ちょっと調べてみた。

ストリーミング1回でアーティストに支払われる金額、およそ0.3円。
一曲聴いて、楽しませて貰って、アルミ硬貨1枚分にもならない。
これ、本当に、釣り合っていると思います?

以下、ギズモードの記事の引用。

Spotify
再生1回=0.0041ドル(約0.3円)
アルバム全曲再生=0.04ドル(約3円)
アルバム10回再生=0.4ドル(約30円)
アルバム100回再生=4.05ドル(約311円)
アルバム1000回再生(毎日1回を3年間レベル)=40.5ドル(約3110円)
Spotifyの無料ユーザーなら、Spotifyは広告から収入を得ます。有料ユーザーの場合は、どんな風にお金が流れるかは大手レーベルにしか明かされていないようです。

Deezer
再生1回=0.0083ドル(約0.6円)
アルバム全曲再生=0.072ドル(約5.5円)
アルバム10回再生=0.72ル(約55円)
アルバム100回再生=7.17ドル(約551円)
アルバム1000回再生(毎日1回を3年間レベル)=71.73ドル(約5510円)
無料ユーザーなら、Deezerは広告で設けます。有料ユーザーの場合は、これもお金の流れは明かされてません。

eMUSIC
これは定期購入システムなので、ユーザーが選ぶプランしだい。だけどだいたい1曲0.29ドル(約22円)1アルバム(9曲)2.6ドル(約199円)

Amazon MP3
MP3ダウンロードは9.81ドル(約754円)バンドに入るのは6.86ユーロ(約527円)だいたい、7:3のとりわけ。

iTunes
アルバムダウンロードは8.66ドル(約665円)バンドに入るのは7:3のとりわけで6.28ドル(約482円)

つまり、1曲ストリーミングが0.3円だと思うと、1曲ダウンロード(約100円)相当まで、なんと300回以上も聞けることになっちゃう。
同じ曲を300回も聞くのって、かなり大変なんじゃなかろうか。
逆に言えば、300回聴いてようやく「購入」と同じって、そんなのアーティストにタダ働きを強いているようなもんじゃないの、と思う。

2013.2.4訂正
この数の計算、何故かわざわざ間違った数値に訂正してあった…(汗)よっぱらってたのか?自分(汗)
ところで、考えてみたらダウンロード1曲100円だとしたら、全額アーティストに入るわけではない、ということを忘れていた。
上の例からアルバムダウンロードで7:3らしいから、1曲100円なら、アーティストに入るのは70円程度か。
まあ、70円だとしても、ストリーミングはその200分の1以下、酷い話であることに変わりはないですね…。

クラシックの場合、はっきりいって、全曲試聴のシステムは欲しいです。
上に紹介したエントリでも書いたけど、たかだか30秒くらい聴いたって、気に入る演奏かどうかなんて分かりません。
どんな演奏か分からないのに、千円以上のお金を払うのは結構キツい。
買って、「これは気に入らなかった」って思いをしたくないと思うから、つい批評家の推薦盤や、ネットの評判に頼る。
そのお陰で、名前を知らない演奏家の演奏までは手が届きにくい。

ストリーミングのお陰で、そういう知らなかった演奏家のディスクを買うようになったので、ストリーミング=演奏家を潰すもの、ではないと思う。
でも、それはあくまで、「試聴」ができればいい、という話です。
なにも、300回もダウンロード価格以下の値段で聴かせてやる必要はないんじゃない?


どうして、ストリーミング業界の人は、「無制限に試聴」に拘るんだろう?
ストリーミングの問題を指摘する人は、大抵、月額料金のことを問題にして、まともな金額払うには会費を値上げしないといけないだの、それじゃ旨味が減るだの言ってるけど、問題はそこじゃないと思う。
「無制限」がいかんのですよ。

有料ストリーミングサービスは、同じユーザーがたとえば3回でも10回でも同じ曲聴いたら全曲ストリーミングは不可、あとはダウンロードして買うか、それと同額の金額払ってその曲を無制限ストリーミング可能にすればいい、と思う。
で、ストリーミング会社側は、一度そうやって所有された楽曲のストリーミングは、1ストリーミングにカウントしない。
それでいいじゃん。

管理データが膨大になるのが嫌なのか? データベースの問題?
そんなの、もはやこの御時世、解決出来ない問題じゃないと思う。
現にiTuneはもうiTune経由で買った曲はストリーミング可能なサービス始めてるし。

1回でもストリーミング可能にしたら、それをデジタルエアチェックして溜め込むから意味ない?
そんな手間かけてまで、わざわざ違法ダウンロードしようとする奴は、絶対お金払う気ないから、そういうのをまともなシステムの枠内でなんとかしようとしても無駄。

それより、有料会員で、ちゃんとアーティストにも利潤が行っている、と安心して何十回も同じ演奏聴いているユーザーにもっと注意を払った方がいいんじゃないの?
この曲気に入ったから、ちゃんとお金払うよ、って人、絶対いると思うよ。
まさか、アーティストがこんなに少ない金額しか貰っていないとは知らなかった、って人も結構いると思う。

せめて、ストリーミング会社側は、こういう事情を説明して、10回も聴くならアーティストの為に是非ダウンロード購入してくれ、って啓蒙すべきなんじゃないのか?

そのへん、レコードレーベルもそうだったけど、実際に音楽でメシ食ってる業界がユーザーを啓蒙する姿勢に欠ける事甚だしいのは、どういう了見なんだろう、と思う。
一応、やってはいるんだろうけど、全然迫力に欠ける。
なんでアーティストや原作者が、「自分達が食えないからちゃんと買ってくれ」なんて声を涸らして叫ばねばいかんのよ。
売り方が悪いコンテンツ提供会社側の問題じゃないか。


しかし、こんなところで吠えても現状はかわらんので、、、

私は気に入った演奏はディスクで買う、が基本だから、5回もストリーミングで聞くようならもうCD買うかダウンロードしている。
買った上で、ストリーミングを利用している(いつもディスク持ち歩くのは面倒だから、職場のBGMとかにはストリーミングを利用)。
それは、いい演奏を聴かせてもらったら、その対価を支払うべきだと思うからです。
今のシステムじゃ、ユーザーがそうやって自分に縛りかけないと、全然演奏家や作曲者にお金が流れない。
それでは、今後、いい演奏やいい音楽に巡り会う機会はどんどん減ってしまう。

そう思っている音楽愛好者は、結構いると思うんだけどなあ。
あるいは、よく考えていなかったけど、きちんとお金の流れを説明してもらったら、やっぱりお金を払うべきだ、と思ってくれる人も沢山いると思う。
でも、今の音楽デジタルビジネスに関する議論には、なんかそういう視点がすかーんと抜けている気がする。


易き(安き)に流れるのは人間の性。
だからこそ、流されてもいいように、って構築されるのがシステム。
だからこそ、流されないように啓蒙しよう、自律しよう、って考えるのが人間。
何も、人間がわざわざシステムに成り下がることはない。